A.個人再生は一律に借金を減額する手続だと説明してきました。
しかし,「借金」といっても,その内容は様々です。例えば,生活費のために金融機関や貸金業者にお金を借りた借金もあれば,人にケガをさせてしまい治療費を請求された損害賠償債務の借金(債務),ギャンブルで浪費してしまった借金もあります。
それでは,こうした借金を何でも減額するのが個人再生なのでしょうか。
いかに現在支払が厳しくなっているからといっても,例えば刑事罰に処されるような詐欺を行って,被害金の損害賠償をしていない人が,個人再生をすれば損害賠償債務が5分の1に減額される,といったら,皆さんさすがにそれはおかしいだろうと思いますよね。自分の再生の前にまずは被害者に賠償すべきだと,皆さん思うでしょう。
ですから,法律でもそうした定めがあります(民事再生法229条3項)。
具体的には,以下の借金(債務)については,個人再生を行っても減額はされません(非減免債権・非免責債権)。
・債務者が悪意で加えた不法行為に基づく損害賠償請求権
・債務者が故意または重大な過失により加えた人の生命または身体を害する不法行為に基づく損害賠償請求権
・婚姻費用や養育費など債務者の扶養義務に関する債務
それぞれ具体例を挙げますと,例えば刑事責任が生じるような故意の犯罪の賠償の件や,人をわざと殴って治療にかかった治療費,未払いのお子さんの養育費や夫婦の婚姻費用です。
こうした借金(債務)は個人再生をしても全く減額されません(非減免債権・非免責債権)。借金がこうしたものだけしかないなら,後述するように支払をコントロールするため以外の意味では,個人再生をする意味はないことになります。
もっとも,上記の借金以外は減額されます。例えばギャンブルでスってしまって作った借金も,飲食代で沢山使ってしまって作った借金も,非減免債権にはあたりませんから,借金は減額されます。
ですから,例えば借金が複数あり,非減免債権以外に減額対象の借金があるなら,個人再生をすれば全体的には借金が減額となりますから,個人再生をする意味があることになります。
また,特に「悪意で加えた不法行為」の非減免債権のパターンについて,その債務が「悪意で加えた」場合といえるのかが問題になることがあります。「悪意」とは何なのか,ということですね。この点については,悪意とは単なる「故意」ではなく「害意」という故意の一段上の認識があった場合と法律解釈されており,具体的な事実を前提とした微妙な該当性判断が必要になることがしばしばあります。この該当性については一律にお話ができませんので,個別に弁護士にご相談下さい。
さらに,非減免債権であっても,民事再生を申立てますと,再生計画で定めた弁済期間中である3年〜5年の間は,非減免債権ではない他の債務と同じように,再生計画で定めた一般的な減額された基準で支払うことになりますから,当面の間は減額した分割払で支払をしていくことができます。つまり,当面は支払を遅らせることができ,支払いの金額もコントロールできるというメリットがあります。
なお,再生計画で定めた弁済期間が終了した後は未払いの非減免債権の残額を一括返済することになりますので,その時に備えて準備しておくことが大切ですが,この点は話が複雑ですので,弁護士にご相談下さい。
以上のように,非減免債権があるから即,個人再生ができないとか,個人再生のメリットがない,ということではないのです。様々な事情があってもすぐに諦めることなく,検討だけはすべきです。個人再生の手続全般については当職がお話させて頂けますので,一度東京池袋の弁護士にご相談下さい。
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