A.過払い訴訟の裁判では,事案に応じて,借主と業者とでいろいろなことが争われます。この裁判での争いの対象のことを争点といいます。
過払いの裁判は日本全国で過去数十年の間たくさん行われてきており,裁判の積み重ねがあります。
その中で,同じような争点が何度も争われてきて,裁判所は,同じ争点についてはこういう状況ならこう判断すると考え方を固めていたりします。
中には,少し前から新しく争われだした争点もあり,まだ裁判所の考え方が固まっていないこともあります。
過払い訴訟の代表的な争点を下記にいくつか記載します(平成26年現在の状況)。
・みなし弁済
過払訴訟の争点といえば,最初はやはりこの争点に触れざるを得ません。
みなし弁済の成否は,そもそも過払金が生じるのかどうかを決める,歴史的に重要な争点でした。
「でした」というのは,最高裁平成18年1月13日判決で借主側有利の結論が決着しており,現在では平成18年1月13日以後の取引で問題になる位です。
・悪意の受益者
過払金に5%の過払利息をつけるかどうかという争点です。
定型的な争点であるため業者がよく主張してきますが,取引の状況によっては最高裁で決着済みであることが多い争点です。比較的新しい取引では争いになる場合がありますが,業者が提出しなければならない証拠が多く,業者から証拠が出てこない場合には,ほぼ借主側有利の結論となります(稀にシティズ等の一部業者で問題となりうる位です。)。
・取引の分断
Q&A完済した後,同じ業者からまた借りました(取引の分断)に書きましたが,取引を一度完済した後にまた借りた事案で争われます。事情次第で勝ったり負けたりする争点です。
分断期間が短い場合はあまり問題になりませんが,長い場合(1年以上)は,前の取引について過払金が時効になるかも考慮しつつ,依頼者の方に過去の取引のご事情をよくお伺いして,有利な事情をピックアップし主張していくことになります(勝訴実績あり)。
・貸し付け停止処理
少し前からアコムが主張しだした争点で,最近はプロミスなど他の業者も主張します。借主が支払の滞納を続けるとある時から業者が新しくお金を借さなくなりますが,そのタイミング(貸し付け停止)からもう新しい借金ができない以上取引が終わったものと考えるべきだという理由で,過払金の10年の時効がスタートするのだという主張です。貸し付け停止から10年たっている場合に問題になります。
これが認められると過払金が時効でまったく返ってこないことになります。ATMから出てくる領収書の貸出し可能額欄が「*」になったとか貸倒れ処理をしたとかでいくつかパターンがあり,パターンに応じて主張していく必要がある争点です(勝訴実績あり)。
・訴外和解による過払金の清算
借主が支払を滞納している時に,業者が「この契約書にサインすれば借金を長期分割にしますよ」とかいって書面にサインさせるのですが,何の説明もなくその書面の中にこっそり「債権債務なし(過払金を放棄する)」という条項が入っていて,後日,過払金を請求すると「もうあなたは過払金を放棄したのだから払う義務はありませんよ」といわれてしまうという争点です。
この争点で負けると,過払金が一円も返ってきません。当職は客観的に見てこれはひどい話で,場合によっては詐欺といえるのではないかと思いますが(この争点で業者の詐欺を認めた横浜地裁平成24年6月26日判決があります。ちなみに,当職が横浜で司法修習をした際にお世話になった裁判官による判決です。弱者に優しい大変立派な裁判官でした。),一応過払金を放棄したという書面があるので,大きな争いになります。
どういう経緯で書面を作ったか,書面の内容などがポイントになってきます(勝訴実績あり)。
・第三者弁済
過払い請求は借金の利息を払いすぎたから返せという論理の請求なわけですが,借金を返済したのが契約上の借主ではなくご両親や知人だったりした場合,払ったのが別の人なので,過払いを請求できる払いすぎた人はその別の人なのではないかという争点です。
結局業者としては誰かに支払う義務があることは変わらないのですが,その別の人に何らかの対応をお願いする必要が出てくる場合があり,連絡がつかない場合などに問題となります。
・契約の切替,債権譲渡
近時多く問題となったのはクラヴィス(タンポート,クオークローン)やサンライフからプロミスへの契約切替の事案です。元々クラヴィスからお金を借りていて,ある時期から業者のグループ再編でプロミスに契約が引き継がれた方が,クラヴィス(平成24年に破産)に対して請求できた過払金をプロミスに対しても請求できるのかという問題で,クラヴィスからプロミスへの引継がれ方により「契約切替」と「債権譲渡」の2パターンがあります。
この件についてはプロミスが任意には全く過払金の返還をしないという時期があり,全件訴訟となっていましたが,「契約切替」の事案では借主側有利の最高裁判例が出て決着しています。「債権譲渡」という形が取られた方については,大変残念ながら最高裁で借主不利の判決が出ています(債権譲渡事案については当職も訴訟で争っており,当時,東京地裁でほぼ間違いなく勝訴だろうという形で訴訟を進めていたのですが,東京地裁で予定された判決言渡し日の1週間前に借主不利の最高裁判例が出てしまい,影響が直撃してしまって,おかげで大変残念な結果となりました。)。
「契約切替」の方については問題なくプロミスに対してクラヴィスやサンライフ分が請求できますので,クラヴィスやサンライフと過去に取引していた方は当職にご相談下さい(弊所では請求のための証拠も確保しています。)。
これらは一例です。この他にも,過払い訴訟には多くの争点があり,今でも激しく争われる争点があります。
当職は過払い訴訟の多くの争点を経験してきております。過払い請求をご依頼頂き,訴訟となった場合は,的確に主張立証を行い,より多くの過払金の回収を目指します。過払いについては,お気軽に池袋の弁護士にご相談下さい。
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