A.自己破産では,財産は処分してお金にし,債権者への配当に回すことになるのですが,生活に必要な一部の財産は処分されないことになっています。
どのような財産が処分されるか・どのような財産が処分されないかは,地方ごとに各裁判所が定めた基準があります。東京地裁の場合,自己破産をしても処分されない財産(「自由財産」といいます)は以下のとおりです。
1.99万円までの現金(弁護士への預け金を含む)
2.20万円以下の預貯金(すべての金融機関合計が20万円を超えない場合。超えると全額処分)
3.20万円以下の生命保険の解約返戻金
4.処分見込み額(中古として売った場合の金額)が20万円以下の自動車
5.居住用家屋の敷金
6.電話加入権
7.支給見込額の8分の1が20万円以下である退職金
8.支給見込額の8分の1が20万円を超える退職金の8分の7
9.家財道具
10.差押えを禁止されている動産または債権(公的年金や確定拠出年金など)
例えば,お持ちの30万円の現金は,自己破産をしても処分されることはありません。賃貸住宅にお住まいの場合,借りるときに敷金を預けたと思いますが,その敷金が処分されることはありません。生活に必要な家財道具が持っていかれることもありません。ご加入の方が多いアフラックなどの医療保険やがん保険についても,大抵が掛け捨てであり解約返戻金がないので自己破産による処分対象にはならず,契約の継続が可能です。
退職金については少し複雑で,破産の申立の際(厳密には申立て後の破産開始決定時),「自己都合退職の場合」の計算で,8分の1が20万円を越える金額(つまり160万円超)を貰う権利があるということになりますと,8分の1の金額を自身の自由財産の中から支払わなければなりません。例えば,自己都合退職をしたとしたら400万円の退職金が貰える方については,50万円を自由財産(破産申立て時に持っている99万円未満の現金や破産申立ての後の給料など)から支払う必要があります。そして,その代わり,将来貰える退職金については全額を確保できるという仕組みです。なお,例外的に8分の1ではなく4分の1の積立てが必要な場合がありますが,弁護士にご相談ください。
逆に,これらにあたらない財産,例えば20万円を超える値がつく自動車や,20万円を超える積立金がある学資保険や年金保険,不動産,株式などの有価証券(20万円以下のものを含みます)などについては処分され,債権者への配当に回ることになります。
住宅については,破産申立前に任意売却をするか,破産手続の中で処分されるのが原則です。例外として,稀に全く買い手がつかない物件が処分されないまま終わることがあります。また,住宅ローンが住宅の価値より明らかに多い物件について住宅ローン債権者による処分に任せて破産手続の中では処分しない場合があります。(住宅ローンのある住宅は自己破産をするとどうなるか?参照)
以上が原則的な財産処分の考え方です。ここから先は具体的な状況に応じた話となります。
例えば,生命保険に長く加入していて20万円以上の解約返戻金になっている方で,現在では健康を害しており保険の解約をしたくないという方は,破産申立代理人弁護士が管財人に対し,解約返戻金相当額を自由財産の現金から別途支払うことで保険を解約せずに維持できる扱いとするよう求める場合があります。その他の処分対象財産についても何らかの対応策がある場合があります。
また,上記は自己破産手続で処分される財産を説明したものですが,返済を停止することで維持できなくなる財産もあります。例えばオートローンを組んだ自動車など,分割払で買ってローンの支払が終わっていない所有権留保物品は,破産の手続を始めると債権者から引揚げ要請が来る場合があります。この際,対象物を維持したいと思った場合は,別途の対策がとれるかを検討することとなります。
当職は,破産申立代理人として,破産手続きに支障がない限り,依頼者に有利な解決を目指します。自己破産にお悩みがおありの方は,一度,東京池袋の弁護士にご相談下さい。
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